外科医ってどんな医者?
医師は外科医と内科医に大きく分けられ、病気を手術で治すのが外科医、手術以外の薬や内視鏡などで治すのが内科医です。実際にはもっと細かく分かれているので、外科医という言い方は曖昧な表現です。実際は、消化器外科医のことを外科医と呼んでいることも多いです。
では、外科医はどんな仕事をしているのでしょう?
外科(消化器外科)とは消化器疾患の外科手術(開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術)を専門とする診療科のことです。一言で言えば、お腹の手術を得意とする科です。
頻度の高い病気は、鼠径ヘルニア、虫垂炎、胆石胆のう炎、痔核などがあります。また、大腸がん、直腸がん、胃がんなどのがん治療も行っています。救急疾患としては、腸閉塞、消化管穿孔などがあり、こうした病気を主に手術で治療しています。
消化器にはどんな臓器があるの?
消化器とは食物を体内に摂取し、消化、吸収、運搬、貯蔵、排泄を行う器官で、以下の臓器があります。消化器だけでも、結構たくさんの臓器があります。
- 食道:長さは約25cmで、胃まで食物を送ります。
- 胃:食物を貯めて、胃液で消化します。
- 小腸:長さは約6mあり、栄養の吸収を行います。十二指腸、空腸、回腸に分けられます。
- 大腸・直腸:約1.5mあり、主に水分の吸収を行います。
- 肛門:肛門括約筋で制御しながら、便を排出します。
- 肝臓:約1〜1.5kgあり体内最大の臓器です。糖・アミノ酸・脂質などの様々な代謝や解毒を担っています。消化酵素の胆汁を作ります。
- 膵臓:消化酵素やインスリン(血糖を調節するホルモン)を作ります。
- 胆嚢:胆汁を貯めておき、食物の刺激で収縮して胆汁を分泌します。
- 胆管:胆汁を肝臓から十二指腸まで運ぶ管です。
- 脾臓:リンパ球を成熟させて免疫機能を担います。
外科医の仕事は大変ですか?
医師数は増えているにも関わらず、実は外科医の数が少しずつ減っています。その理由として、時間外勤務が多いなどの過重労働の問題や、責任が重くリスクの高い仕事が多いことなどが一因にあると言われています。そうしたことを考えると、大変な面もあるかもしれません。
しかし同時に、やりがいがある仕事でもあり、自分が手術をした患者さんが元気に退院していくことは、とても嬉しいものです。手術を繰り返すことで、技術の向上が目に見えて表れ、自分の成長を実感できます。
手術だけでなく、内視鏡治療、薬による治療、放射線治療など、幅広い知識と技術を習得し実践することができます。
今では、腹腔鏡下手術といって、お腹を切るのではなく、小さな穴を開けて行う低侵襲手術もできます。更に、ダビンチを用いたロボット支援下手術も広がりつつあり、まるでお腹の中に自分が入って手術しているようなことまでできる時代になりました。
外科医になるにはどうしたらいいの?
外科医になるまで、そして、その後のキャリアについて説明します。
- 高校
- 大学医学部 6年間
- 医師国家試験 合格すると医師免許証を取得できる
- 臨床研修 2年間
- 外科専門医の研修 約3年間
- サブスペシャリティに分かれて修練を重ねる
- 更に専門分野を極める – 日本内視鏡外科学会 技術認定制度
1. 高校
高校を卒業するまでは、他の職業と同じです。それまでに医師を目指すかどうかを決め、医師を目指すのであれば、大学医学部を受験し合格する必要があります。
最近では海外の大学医学部を卒業し、日本で医師を目指す人も増えていますが、まだ少数です。
2. 大学医学部
大学医学部に入学し、6年間通います。一般教養・基礎医学・臨床医学などを学び、臨床実習(病院での実習)を行います。医学部は必須の単位が多く、単位が取れないと留年します。大学医学部を卒業すると、医師国家試験の受験資格を取得できます。
3. 医師国家試験
大学6年生の冬に医師国家試験を受験し、合格すると医師免許証を取得し、医師になります。
4. 臨床研修
医師として2年間の臨床研修を受けます。この時は研修医と呼ばれ、働きながら学びます。全ての医師は、内科や外科、救急など様々な診療科で研修し、医師としての基礎的な知識、技術を身につけます。
5. 外科専門医の研修
約3年間、外科医は外科専門医になるための研修を行います。研修プログラム終了後に試験を受けて合格すると、外科専門医になれます。
6. サブスペシャリティに分かれて修練を重ねる
外科専門医になった時点で、何でもできるようになったわけではありません。まだまだ未熟な部分があり、働きながら、更に修練を重ねていく必要があります。
外科医の場合は、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺外科、内分泌外科といったサブスペシャルティ(専門分野)に分かれます。消化器に特化して外科手術を学び、消化器外科専門医を取得します。
7. 更に専門分野を極める – 日本内視鏡外科学会 技術認定制度
外科専門医、消化器外科専門医となった後に、更に内視鏡外科(腹腔鏡下手術)を指導する技量を身につけて挑む資格があります。それが、技術認定医です。
日本内視鏡外科学会 技術認定制度とは、内視鏡下手術を安全かつ適切に施行する技術があり、かつ指導する技量があることを認定する日本独自の制度です。手術実績、業績に加え、手術動画を提出して審査を受けます。それだけに最難関の資格で、経験豊富な医師らが挑んでいるにも関わらず、2018年度の審査では合格率が25%でした。
日本の医師や専門医の人数
- 医師:327,210名(2019年12月現在)
- 外科専門医:23,723名(2020年9月現在)
- 消化器外科専門医:7,411名(2020年9月現在)
- 技術認定医:消化器外科で2,359名、ヘルニアで112名(2020年9月現在)
まとめ:外科医は責任が重い仕事ですが、やりがいもあり楽しいです。
・ 外科医のキャリアは、外科専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医と進んでいきます。