鼠径ヘルニア(脱腸)はどんな症状でどう診断するか?

鼠径ヘルニア

質問

足のつけ根がぽっこり腫れた患者「足のつけ根がぽっこり腫れましたが、これはもしかして脱腸ですか?」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

鼠径ヘルニア(脱腸)は、受診して診断を受ける必要がありますが、大抵は自己診断できる疾患です。

鼠径ヘルニアを専門としている私が、症状や検査についてわかりやすく説明します。

鼠径ヘルニア(脱腸)とは?

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鼠径(そけい)ヘルニアとは、足のつけ根(鼠径部)のお腹の壁が弱くなり、そこから腸がぽっこり出てくる病気のことです。俗に脱腸と言います。放っておくと大きくなったり、痛みが強くなったり、嵌頓(かんとん)して出たまま戻らなくなることがあります。

生涯発症率は男性が27%、女性が3%です。頻度の高いよくある病気で、国内では毎年15万人以上、世界では毎年約2,000万人が手術を受けています。消化器外科の中では最も手術件数の多い疾患です。

鼠径ヘルニアの原因は何か?

多くは加齢に伴って腹壁の組織が弱くなり、そこから腸管が脱出してしまうことが原因です。また、立ち仕事が多かったり、腹圧がかかる重いものを持つ仕事も原因の一つに挙げられます。肥満や喫煙も一因と報告されています。

鼠径ヘルニア(脱腸)ってどんな症状?

鼠径ヘルニア

立ち上がったりお腹に力を入れると、上図のように足のつけ根(鼠径部)がぽっこり膨らみ、手で押したり横になると戻ります。大きさはピンポン球から卵ぐらいのことが多いです。立って足のつけ根を見ると、膨らみに左右差が見られます。大きくなると足のつけ根から陰嚢まで腫れてしまうこともあります。

重い感じや鈍い不快感を伴うことがあり、長時間立っていたり、腹圧がかかると悪化し、横になると楽になります。

頻度は稀ですが、出たまま戻らなくなる(嵌頓)してしまうと、腸が壊死・穿孔したり、腸閉塞になるため、緊急手術をしなければ命に関わります

鼠径ヘルニアは何科に受診すればいいか?

近くの病院に鼠径ヘルニア専門外来があれば最適です。もし無くても、外科(消化器外科)に受診すれば、ほとんどの病院で対応可能です。病院に電話で問い合わせてもいいでしょう。

足のつけ根に膨らみはなく、痛みだけの場合は、鼠径ヘルニアか?

鼠径ヘルニアの初期症状として痛みや重い不快感だけを自覚することがあります。ただし、膨らみがはっきりしない時は、内科や泌尿器科、整形外科の疾患の可能性も高くなりますので、必要に応じて検査を行います。

足のつけ根に腫瘤(しこり)が触れる場合は、鼠径ヘルニアか?

豆のような腫瘤(しこり)を自覚し、手で押しても戻らないことがあります。リンパ節腫大やヌック管水腫、皮膚科疾患(腫瘍や膿瘍)など様々な原因が考えられますので、必要に応じて検査を行います。

鼠径ヘルニア(脱腸)を自己診断する方法は?

医師

鼠径ヘルニアの自己診断チェックリスト

  1. 立ち上がったりお腹に力を入れると、足のつけ根(鼠径部)がぽっこり膨らむ
  2. 立った状態で足のつけ根を見ると、膨らみに左右差がある。
  3. 手で押したり横になると、ぽっこりした膨らみが戻って無くなってしまう

チェックリストの1-3が全て当てはまる場合、ほぼ鼠径ヘルニアと自己診断できます。受診して確定診断を受けることをお勧めします。

このチェックリスト中で特に大事なのが3です。鼠径ヘルニアは膨らみを押すと脱出していた腸や脂肪がお腹の中に戻ってしまうために、膨らみが無くなってしまいます。逆に膨らみが無くならない場合は、何らかの腫瘤があるということですので、リンパ節腫脹や腫瘍、水腫など、他の病気を考える必要があります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の診断にどんな検査をするか?

超音波検査

診断方法は検査よりも、医師による診察が最も確実です(感度75%、特異度96%)。典型的な鼠径ヘルニアであれば、症状や触診によってほぼ間違いなく診断することができます。

立ち上がると鼠径部がぽっこり膨らみ、押すとクチュクチュっと戻る場合は、触診だけで鼠径ヘルニアと診断できます。

鼠径部の膨隆がはっきりしない場合や、腫瘤が触れて押しても戻らない場合などは、他の疾患の可能性も疑う必要があります。超音波検査(感度86%、特異度77%)やCT検査(感度80%、特異度65%)などを行います。​

まとめ:立ち上がると足のつけ根がぽっこり膨らみ、左右差があり、押して戻るなら、鼠径ヘルニア(脱腸)と自己診断できます。

この記事のポイントをまとめます。

  • 鼠径ヘルニアは、足のつけ根(鼠径部)が膨らんで、腸がぽっこり出てくる病気です。
  • 立ち上がると足のつけ根がぽっこり膨らみ、左右差があり、押すと戻るなら、鼠径ヘルニアと自己診断できます。
  • 医師の診察でほとんどの場合は診断できますが、はっきりしない時は検査を追加します。(
松下公治 写真

松下「典型的な症状では鼠径ヘルニアの診断は難しくありませんが、他の病気の可能性もあります。鼠径ヘルニアを疑った時は受診し、主治医によく相談することが大切です。」

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