腹腔鏡下手術と開腹手術の比較

医療の雑学

疑問

お腹の手術を受ける患者「お腹の手術を受ける予定ですが、腹腔鏡下手術と開腹手術の違いは何ですか?」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

お腹の手術は大きく分けると、腹腔鏡下手術開腹手術があります。

外科医として、各々どちらの手術にも携わっている私が、「腹腔鏡下手術と開腹手術の違いは何か?」という疑問に答えます。

腹腔鏡下手術とは?

器具

腹腔鏡手術とは、腹腔鏡(カメラ)が映した映像をモニターで見ながら行う手術のことです。お腹に数カ所2-12mmの小さな穴を開け、炭酸ガスでお腹を膨らませて行います。

傷口が小さく、痛みが少ないため、術後の回復が早く、体の負担が少ない手術です。腹腔鏡で病変部を映し、拡大された映像を見ながら手術するので、肉眼では不可能だった精密な手術操作ができ、出血が少ないです。

欠点は技術の習得に時間がかかり、拡大されているので全体が見えづらく、直接臓器を触れることができない点です。癒着が強い時、出血が制御できない時、癌が周囲に広がっている時は、途中で開腹手術に移行することがあります。また、術前の検査結果で開腹手術の方が適切と判断された場合は、最初から開腹手術を行います。

腹腔鏡下手術は「内視鏡外科手術」とも言いますが、胃カメラや大腸カメラなどを用いて行う「内視鏡治療」とは別の治療です。​

更に低侵襲を目指した手術とは?

開腹手術に比べ腹腔鏡下手術は傷が小さく、臓器が直接空気に触れないため、体の負担が少なく低侵襲な手術です。

更に低侵襲を目指した手術として、傷の数を減らすReduced port surgeryや、傷の大きさを小さくするNeedlescopic surgeryといった方法もあります。更には単孔式内視鏡手術(Single port surgery)といって、臍の孔1ヶ所だけで行うことも可能です。傷痕が臍で隠れてしまうので、手術をしたかどうかほとんどわからなくなってしまいます。

単孔式内視鏡手術は整容性の点ではいいのですが、臍から何本も鉗子を入れるため傷が大きくなってしまい、術後の痛みが強くなる傾向があります。例えば、5mmの傷2ヶ所よりも10mmの傷1ヶ所の方が痛みが強くなります。

そのため、私自身は単孔式内視鏡手術とNeedlescopic surgeryを組み合わせた手術を行っています。3mm程度の孔は痛みがほとんどなく、傷痕もほとんどわからなくなってしまいます。映像を映す腹腔鏡と電気メスなどの器具は5mmですので、それらを最小限の切開で臍から挿入し、必要に応じて3mmの鉗子を追加しています。安全な手術が第一ですので、病状に応じて安全性を確保した上で、これらを組み合わせて、より体の負担が少ない手術を目指しています。

腹腔鏡下手術と開腹手術の比較

傷

腹腔鏡下手術と開腹手術の比較

腹腔鏡下手術 開腹手術
傷口 2〜12mmの傷が数カ所 大きな傷
痛み 軽い 痛い
手術時間 やや長い 短い
体への負担 小さい 大きい
術後の癒着 少ない やや多い
入院期間 短い 長い
退院後の復帰 早い 遅い

腹腔鏡下手術と開腹手術の特徴を、比較してまとめました。腹腔鏡下手術は低侵襲である点が大きな利点であり、一方、開腹手術は直接臓器を触れて手術できる点が大きな利点です。手術直後は腹腔鏡手術の方が体の負担が少ない分、回復が早く、早期に社会復帰ができる点で優位性があります。

ただし、長期成績は大抵の手術で、差がないことが多いです。病状や手術の内容によって、どちらがより良いは違いますので、主治医とよく相談することが大切です。

まとめ:低侵襲な腹腔鏡下手術と、操作性のよい開腹手術の利点・欠点を考慮して、手術方法を検討します。

この記事のポイントをまとめます。

  • 腹腔鏡下手術は、傷口が小さく、痛みが少ないため、術後の回復が早く、体の負担が少ない手術です。
  • 更に低侵襲を目指して、穴の数を減らしたり、傷を小さくしたり、1ヶ所の穴だけで行う工夫をした手術もあります。
松下公治 写真

松下「腹腔鏡下手術と開腹手術は各々に利点・欠点があり、病状や年齢、基礎疾患などによって、最適な方法は違いますので、主治医とよく相談することが大切です。」

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