私は、鼠径ヘルニア専門クリニックを開院した。
きっかけは、鼠径ヘルニアで悩む患者さんに「もっと負担の少ない治療の選択肢」を届けたいという想いだった。
しかし、かつての私は開業など考えたこともなかった。
外科医として充実していた日々
医師になり、消化器外科医として研鑽を積む日々。
手術に向き合い、患者さんを治すことに全力を注ぐ毎日は、とても充実していた。
しかし、開業とは、医師としての道に加えて、経営者としての責任も背負うことである。
資金調達、人材採用、設備投資など、どれも簡単なことではない。
大きなリスクを伴う決断を、当時の私は避けていた。
日帰り手術との出会いが価値観を変えた
転機となったのは、2017年から取り組み始めた腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術だった。
腹腔鏡手術は、傷が小さく、術後の痛みも軽減でき、回復が早い。
技術を磨くほどに、その有用性を実感していた。
しかし、日帰り手術に携わる中で、私はあることに気づいた。
それまで私は、「病気を治すこと」にばかり目を向けていた。
けれど患者さんにとっては、「入院すること」そのものが大きな負担だった。
仕事を休まなければならない。
家族の生活に影響が出る。
慣れない病院で過ごす不安やストレス。
治療のためとはいえ、その負担は決して小さくない。
病院という仕組みの中では、多くの手続きや調整も必要になる。
それは安全のために重要なことだ。
しかし鼠径ヘルニア手術に限れば、もっと合理的に、もっと患者さん中心に診療できるのではないか。
本当に必要な部分に集中し、余計な負担を減らす。
それが、私の目指す形だった。
「喜ばれる医療」が原点
日帰り手術を受けた患者さんから、
「こんなに早く帰れるとは思わなかった」
「仕事をあまり休まずに済んだ」
「思っていたよりずっと楽だった」
そんな言葉をいただくようになった。
そのとき、私は確信した。
私が医師を志した原点。
それは、「人から喜ばれる仕事がしたい」という想い。
それは、
鼠径ヘルニア × 腹腔鏡手術 × 日帰り手術
という組み合わせによって実現できるのではないか、と。
なぜ専門クリニックなのか
鼠径ヘルニアは、外科手術の中でも最も件数の多い疾患のひとつだ。
多くの方が悩んでいるにもかかわらず、
専門的に腹腔鏡で日帰り手術を提供する施設は限られている。
だからこそ、この分野に特化したクリニックが必要だと考えた。
埼玉県内には、腹腔鏡による日帰り手術を専門とする施設がなかった。
交通の要所である大宮駅周辺は通院しやすく、落ち着いた環境も整っている。
ここなら、私の理想とする診療を実現できる。
そう確信し、大宮での開院を決意した。
開業して初めて見えたもの
2022年9月に埼玉外科クリニックを開院し、2024年3月に医療法人博文会を設立した。
実際に開業してみて痛感したのは、
「手術ができるだけでは医療は成り立たない」ということだった。
資金計画、設備整備、人材育成、業務効率化、安全管理など。
一つひとつの仕組みが整ってこそ、安全で質の高い医療が提供できる。
そして何より大切なのは「人」だ。
医療を提供するのも人。
それを支えるのも人。
治療を受けるのも人。
素晴らしいスタッフとともに医療を提供できていることに、日々感謝している。
これからも、理想を追い続ける
鼠径ヘルニアで悩む患者さんが、
「ここなら安心できる」
「ここで手術を受けてよかった」
そう思われる場所であり続けたい。
そのために、日々改善を重ねていく。
まとめ
私が開業を決めた理由は、突き詰めればひとつだ。
鼠径ヘルニアで悩む患者さんに、負担の少ない治療を届けたい。
その一点に尽きる。
外科医として充実していた日々の中で、腹腔鏡による日帰り手術と出会った。
そして気づいた。
患者さんにとっての負担は、病気そのものだけではないということに。
入院という負担を減らし、必要なことに集中する。
そのために、専門クリニックという形を選んだ。
開業してみると、手術だけでは医療は成り立たないことを痛感した。
仕組みがあり、人がいて、はじめて安全な医療が提供できる。
だからこそ、これからも学び続ける。
経営も、組織づくりも、すべては同じ目的につながっている。
最高の手術を、患者さんに届けたい。
私の原点は、今も変わっていない。